無力なエリンシアに出来た事はただ耐えて、愛する夫を待つひたすらアーサーの帰りを待った…待ちわびた永遠のような救いのない絶望の日々ある時、ようやく待ち望んでいた事が起こる。彼はテインタル王女)に伴われて帰って来た ついに夫のアーサーが現れたのだった。◇ ◇ ◇「戻ってくるのが、遅くなってすまないエリンシア!」そう言って、愛するエリンシアを抱きしめるアーサー 「……」涙を流して、愛しい夫のアーサーに抱きしめられるエリンシア「待たせて、すまない、辛かったろう」「……」アーサーの手の平に指先で短い単語を一つ書く『許して…』筆談でエリンシアは私を許してと書いた。 意味を察し、エリンシアの涙を拭う「君のせいじゃない、守れなかったのは僕だすまない、許してくれ、エリンシア」◇ ◇ ◇「ずっと生き残った者達とともに捕虜として黒の国の収容所に囚われていた」「捕虜交換で戻れたよ、エリンシア」「ずっと前の戦(いくさ)」「一度、黒の国を滅ぼして その時に奴隷にする為に、この巨人族の連れていった黒の国の人間や貴族達…ああ、前の戦で捕まえた白の国の民達も」「多くは女たちだがその者達と交換で他の捕虜達と共に戻って来れたよ」「ティンタル王女も鎧の姿で、弱った仲間達の護衛をしてくれてね」軽く首を横にして、微かに微笑するティンタル「・・・」抱きしめられたまま話を聞きながら、涙を流すエリンシア「本来なら、エリンシア、貴方も・・戻る事も」首を振るエリンシア そっとアーサーの唇に自分の唇を重ねアーサーを見つめる。「大事な娘のティナにも会いたいよ」二人の邪魔にならないようにティンタル王女はその場から立ち去った。
王の城で迎える最初の夜、エリンシアは王に呼び出され…其れから「羽琴を用意させた、一曲所望する」王が言う頷くとエリンシアは曲を奏で始めた。ワインを飲みながら、巨人族の王は満足そうに聞く「もう、良い来いエリンシア、お前は変わらず美しい」「私の情けで、存分に悶え、泣くが良い」押したされ、服を引き裂かれるエリンシア耳、エリンシアの猫に似た独特な耳元で囁く言葉は残忍な王らしい言葉だった。「我に従え、足を開け…我を満足させろ、でなければお前の夫か娘にツケを払わせる」「…!」羽琴の演奏の後で ベットに押し倒され、抗えずに玩具のように扱いを受け、乱暴された乱暴で残忍な絶対権力者である王実の弟、恋人を殺した白の宗主の側室にされた記憶が涙と共に錯綜して重なるただ、泣いて耐えるしかないエリンシアまた…あの悪夢の始まりだった。時々、許しを受け、訪ねてくるアーサーの優しい叔父夫婦に自分の子供ティナ 夫の友人達なかなか、会えないが…テインタル王女ティンタルとの再会が救いであった成長する事に美貌の黒の王妃にますます似て美しくなるテインタル王女「白の国は巨人族の猛攻から自分達の国を守ったわよ、エリンシア姫、実は意外な救援が来たらしいわ」ある時、ティンタル王女はそう話した。「!?」意外な救援が?何はともあれ、故郷の白の国は無事らしいエリンシアは大事な自分の小箱を開ける。リアンに貰った金の髪飾りに 白の国の皆の絵 エイル、エルトニア幼い子供姿の絵エイル‥エルトニアはどっちの性を選んだのだろうか?もしかしたら リアンの花嫁になったかも知れないところで、後に知った…戦(いくさ)の事だが白の国の侵略は突然現れた 黒の国の王‥火竜王、アーシュラン王の援軍により巨人族は敗退して…。白の国の裏切りで、黒の国は一度、滅ぼされたはずで…。長い間、数千年、戦いあった敵国憎い敵のはずの白の国を何故、黒の国が救ったか…?実はそれは余りにも、意外な理由王の個人的な理由であり、エリンシアにも関係深い事情であったが…。だか、大きな問題が一つ…その戦いの中でアーサーは行方不明となり 戦からは、帰還しなかった。
其れは悪夢の再来と…白の姫エリンシアにとっては信じられない戦の始まり数年の月日が流れて…生き残った黒の王子達により、黒の王国が奪還され…数年後一度滅ぼした黒の王国、国交が悪くなった白の王国との小競り合いが続いていたそんな、ある日の事◇ ◇ ◇巨人族の国では まだ長く寒い冬の中だった 雪が国中を覆うエリンシアは暖炉で暖まりながら 椅子に座り 温かなミルクで作ったシチューをティナと食べていた。「ママ、また、魔法画の幻獣達に綺麗な黒のティンタル様とお茶したり、遊びたい、其れからサウナ、スチー厶バス、蒸し風呂」ティナの言葉に微笑して頷くエリンシア魔法画の幻獣達は数日に一度、城を抜け出してはエリンシアとティナに会いに来るのが日課となっていた。時々、ティンタルとも鉢合わせしたならば、皆で楽しく過ごす事も…。其れから泊まりに来た黒の王女ティンタルサウナに幾度か共に入ったが、彼女の白磁のような滑らかな綺麗な身体には呪いの入れ墨切ない表情のティンタルを思い出す家のドアが開き、夫のアーサーが帰宅した。「ただいまエリンシア、ティナ」「おかえりなさいパパ」其れから、食事をしながら彼は言う「今度、大きな戦がある」アーサーは言った「王は 貴方に 私が戦に行ってる間 王の城に戻るようにと 命令された」「・・・」もしや・・王は また私を?そう思い、顔色を変えるエリンシア「王命には逆らえない」少し震えて自分の手を握り締めるアーサーもそう思っている様子もう一つ、アーサーは白の姫であるエリンシアに言えない事があった。黒の国から敗退した後、次に巨人族の王はエリンシアの故郷、白の国に侵略を開始今度は白の国の侵略ため息をつく◇ ◇ ◇次の日、荷物をまとめ子供のいない優しい叔父夫婦に子供のティナ預け 「良い子にねティナ」「ママ、パパ」アーサーは戦場にエリンシアは 巨人族の王の居城に向かう別れ際、エリンシアとアーサーはくちずけを交わすその後、間もなく「街で白の国の民が大勢、連れて来られた、奴隷市場が賑やかになって」「生憎、今は白の貴族でなく、国境の普通の人族ばかりだ」「巨人族の王は今度は白の国を手に入れる気だ」王城に向かっていたエリンシアに聞こた会話に街中で荷馬車の鉄檻の中で泣く白の民達の姿街の騒ぎを偶然、耳にして
それは 少し前の出来事の御話黒の国では・・ついに黒の王子達が王国を奪還する!黒の国 元の黒の王宮では そこで暮らし 執権として黒の国を治めてたヴァン伯爵ヴァン伯爵は黒の王子アーシュラン達に追い詰めれて この黒の王宮の中で今にも殺されそうになっていた。◇ ◇ ◇王宮は所々、燃えて、また酷い有様だった。「聞きたい事がある・・ヴァン伯爵」リュース公が鎧を身に纏い リュース公が持つ血まみれの剣を大きな怪我を負ったヴァン伯爵に突きつける。そこには…その場には王子アーシュランと戦士セルトがいた。アーシュラン王子の長いエルフのような耳が軽く揺れ、赤い瞳は不気味な光を放つように輝く。「聞きたいのは、死体が見つからなかったテインタル王女とエリンシア姫だ彼女達は 無事なのか? 巨人族の王の所か?」「私は知っているぞ!エリンシア姫に乱暴したという話・・」冷静に リュース公は言う◇ ◇ ◇嫌がらの意味もあった ヴァン伯爵は嘘をついた。「ハハッ・・最初は その戦士セルトの目の前でこの黒の王宮で 私の兵士達が汚したぞ!」「その頃は、魔法具で 心を封じていたからセルトは覚えてはいないだろう」顔色を変えるセルトアーシュランがセルトの心を封じていた ヴァン伯爵に従うように作られた魔法具を壊してそのセルトを解放して セルトがアーシュランに忠誠を誓ったのは…少し前の出来事「その後で、私が姫を抱いた 美しいオッド・アイの瞳に金の髪 白い美しい美貌に身体」「素晴らしい夜だった!抱かれて泣いている様も美しかった」◇ ◇ ◇「・・・」無表情で立ちつくすリュース公 アーシュラン達も黙って聞いていた「エリンシアは 懐妊してた あれは 黒の王の子か? それともお前の子か? リュース公?何度も犯してやったから 子供は流産したが・・」口元から血を流しつつクククッと笑う「私の子供だ」リュース公は言う「そうか!あはは!」笑うヴァン伯爵「テインタル王女の事は知らない・・兵士に殺されたのでは?エリンシア姫は 私や兵士どもに乱暴され 子供を流産して、まもなく、ある晩、牢屋の中で息耐えた」◇ ◇ ◇「エリンシア姫の亡骸は?」「あの樹海 パンプローナの森の奥に捨てた死体は獣に食われて もう探し出せぬだろうさ・・」ヴァン伯爵にリュー
数カ月後の事…巨人族の北の国エリンシアの家にある時、テインタル王女が訪ねて来た「エリンシア姫、私ね やっと記憶を取り戻した」微笑む王女今度はテインタル王女の方がエリンシア姫を抱きしめた「貴方の故郷の白の国へ帰りたいでしょう? 貴方の大事な人達がいるわ」エリンシアは心の中で思った。エリンシアの思念を受け取る王女ティンタルいいのです、貴方が記憶を取り戻しただけでも 私には 幸いです二人は互いに再び抱きしめあい、涙を流してゆく…。「エリンシア?それに…ティンタル王女?王女が何故、此処に?」丁度、その時だった アーサーがやっと黒の国から帰ってきた。「え!貴方、確かアーサー」驚く王女ティンタル微笑して、それぞれ二人に説明するエリンシア魔力の強いティンタル王女には心話、思念で…心話などが使えない、普通の民であるアーサーには筆談で…。「貴方がエリンシア姫を助けて、結婚して夫に」「はい、ティンタル王女、姫、改めてよろしくお願いします、其れから、あの戦いでは…あの時は有難うございます」「黒の王宮ではエリンシアが貴方の傍近くで家庭教師に羽琴の演奏を…」「母、黒の王妃アリアンはエリンシア姫が好きだったわ、特に演奏が大好きで…」「ママ〜」小さなティナがエリンシアに抱きつく。「それに可愛いわ、二人の子供のティナ」◇ ◇ ◇その夜は夫であるアーサーを交えて 羽琴の演奏に それに食事をした。アーサーは土産にと黒の国と白の国の食材が手に入れ黒と白の国、それぞれの料理がテーブルいっぱいに並ぶ皆、微笑み、幸せな時間を共有したのだった。会話の中で アーサーが思わぬ話をした黒の国は 執権として黒の国を治めていたヴァン伯爵を殺して黒の王子アーシュラン リュース公やアルテイシア姫に 開放され 魔具を壊され心を取り戻した竜人セルト命令に従い、魔法で意識がなかったとはいえ竜人セルトは父王を殺したのだか…。そうしてアーシュラン達 王子に従う戦士セルト、リュース公、アルテイシア姫達により、ついには黒の王国は奪還され王子アーシュランは戴冠火竜王(サラマンデイア)となり 黒の王になったという..。王女が、テインタル王女が黒の国に戻れたらいいのにふと、降りしきる雪を窓越しに見ながら思うエリンシア
「謎の矢文のお蔭ですね」リュース公がしみじみと言う 矢に括り付けられた手紙に地図 内部の深い情報に精通した者しか知りえない重要な情報の数々 「時々、矢文がこちら側の砦、出城に打ち込まれるが、内部に、詳しく者の情報だ」「そうですねアーシュラン王子」「危うく、俺の竜人、守護者セルトが罠にはまり、悪くすれば殺される所だったが、矢文の情報で罠を回避を出来た」「はい、王子」「しかし、一体、誰が何の目的なのか…敵に入り込んでいた…敵側の黒の貴族でしょうか?」「さあな…リュース公、だが、予定より作戦が進み、成功している、この勢いでヴァン伯爵を追い詰められるだろう」「黒の王国を取り戻す日も近いぞ、リュース公」「はい、アーシュラン王子様」「リュース公様、また矢文が届きました!」◇ ◇ ◇木陰に潜み、リュース公の出城に矢を放った者手にした弓を下に降ろして、軽いため息をつく少女間者として、簡素な流民の姿をした王女ティンタル彼女は最近、手に入れた耳飾りを見つめる。それは高価なエメラルドと真珠の耳飾りヴァン伯爵が自分の愛妾に与えた品物殺された王妃、アリアン王妃のお気に入りの一つティンタルにとっては形見の品愛妾が落とした時に、そっと拾ったもの「母のアリアン王妃はヴァン伯爵にとっては従姉だったのにね、自分の愛妾に与える程度のものなのかしら?」「手に入れたのは片方だけど…今の私には似合わないか」淋しそうに苦笑するティンタル王女「兄さま達は強いわ…数で押されてたけど、ヴァン伯爵は徐々に追い詰められているわヴァン伯爵が殺される日も近い」